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2024/04/19 19:01




栃木レザーとの関係性は、所作が誕生して以来です。我々にとっての原点でもあります。
※栃木レザーとは、栃木レザー株式会社がつくる革のことを指します

栃木レザー株式会社(以下、栃木レザー社)は、「皮から革へ」なめす工程を創業1937年より脈々と受け継ぎ、「ピット槽なめし」に特化した世界的に見ても大変稀有なものづくりをされています。
栃木レザーといえば、「フルベジタブルタンニンレザー」、先述の「ピット槽なめし」と、革の魅力を最大限に活かすことに信頼があるタンナー様なのですが、その信頼に値するもの作りと革ができるまでの工程をご紹介いたします。


____ 目次  ____

・フルベジタブルタンニン
・他では真似ができない「ひと手間」
・皮から革への最大限
・自然との共存
・革ができるまでの20の工程
・まとめ

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革をつくる「鞣し(なめし)」には、20にも及ぶ製造工程があります。

一つ一つの工程が創業以来受け継がれた熟練の技術や姿勢を要するわけなのですが、20工程がすべてではありません。(あいだあいだの検品や移動などの工程は入っておりません)。今ブログでは栃木レザーさんならでは、に焦点を当てて紹介いたします。







ベジタブルタンニン=植物タンニン

 

※160ものピット槽が並ぶ光景は世界的にも稀有な光景です


タンニンと革の繊維であるコラーゲン(タンパク質)をじっくり結合させる工程です。
薄い濃度のタンニンが入ったピット槽から濃い濃度のピット槽へ、約20日間かけてじっくりと浸透させます。
栃木レザー社では、160のピット槽が常に濃度調整されて稼働しています。

※タンニンなめしについて
ピット槽に漬け込むことなく、タイコと呼ばれる大きな樽で回す方法では約1日を要しますが、早く仕上がることに対して革の繊維がほぐれすぎてしまいます。ピット槽に漬け込むタンニンなめしは先述のように約20日間かけて、繊維を崩すことなくタンニンと結合させています。










ピット槽には赤い色をしたタンニン液が入っています。
3/8 国際女性デー、女性の日でお馴染みの「ミモザ」。その厳選された質の高いミモザの樹皮を一日かけて溶かすことでタンニン液を作っています。


 


 

先述のフルベジタブルタンニン、ピット槽なめしに加えて「石灰漬けの脱毛」の工程でもピット槽に漬け込んでいます。





動物の皮から毛を抜く工程、脱毛。
先述のタンニンなめしの前に、皮がコラーゲンと結びつきやすくするために行います。

短時間かつ少ない工程で脱毛作業を行うタンナーが多い中、皮を傷つけずに繊維構造を崩してしまわないようにと1週間ほどの時間をかけます。ハリのある丈夫で滑らかな革に仕上げるために、濃度を5段階に分け、漬け込むことで脱毛をしています。皮に余計な傷や負担を与えないように、栃木レザー社ではこの方法を採用しています。

こうした工程へのこだわりは、革の裁断面に現れます。
繊維が潰れてしまうと革の断面はボサボサになりますが、繊維がしっかりした革には断面にもきちんと目が詰まっています。





原皮(げんぴ)の水洗い・水戻し、背割りを経たのちに
この石灰漬けの工程で、皮を膨らませ、余分な脂肪を分解して、コラーゲン繊維をほぐしています。革に柔軟性を持たせるための重要な作業です。




工程の間にも
人と時間をかけて、一枚一枚検品しています。
まだ「革」らしくない状態から、こんなに手をかけていることに驚きます。







 皮 Skin → 動植物の外表を覆っている膜

革 Leather → 皮から毛や脂肪を取り除き、腐敗や硬化することを防ぐためになめし加工されたもののこと


動物の皮を革に加工することを「鞣し(なめし)」と言います。

なぜ時間短縮できることをしないのか? 
なぜ手間をかけ続けるのか?

それは、皆様にとって長く愛用できる革をつくるため、です。
個人的には、世の合理化の流れに逆らって「専業特化」している姿は素晴らしくかっこいいと思っています。キャッシュレスの中で、所作があり続けるためにも共感、リスペクトを感じています。






例えば、ハンドセッターと呼ばれる機械。
厚手の革や伸びにくい革にハンドセッターをかけて、革の繊維に沿い、伸ばすことで滑らかにする工程です。

イタリア製の機械を用いていますが、すでにメーカーでつくられていないため故障した場合に修理して使うことができません。

時代が変わり、世の中が便利になるほどに
必ずしも「ひと手間」をかけることは、いいことだらけではなくリスクを伴います。

先述のピット槽も古くなると、数年で木枠ごと交換しないといけなくなります。そうなると生産が止まることにもなります。そういった道具との付き合い方も含めて「ひと手間」は、ただの「ひと手間」ではなくなるのです。





手で繊維を伸ばしているところですが
一枚一枚、革と向き合う姿には驚きを超えて、ただただ感嘆します。






革の裏側を走る「ローラー跡」と呼ばれる真っ直ぐな線。
比較的薄い革の厚みを揃えるための特別な工程。すべてに機械的に入る跡ですが、おそらくご存知の方もいらっしゃると思います。画像は、機械で厚みを一定に揃えて、なお手と目で厚みをチェックされています。






皆様の手元に届くまで
たくさんの工程、たくさんの人が関わっています。
そこには積み重なった歴史があり、継承されてきた技術があり
最大限、革の魅力を活かしています。







少し話が逸れます。

ブログをお読みいただいている方々にとって、周知の事実とは思いますが
革製品をつくるために、動物を殺めることはありません。
わたしたち人間が『食べる」ことで生じる副産物である皮を、革製品として活かすための加工をしています。

そして
タンニンなめしの中でも昔ながらの「ピット槽」でなめされる、栃木レザー社のフルベジタブルタンニンレザー。いまの主流の製法よりも、何倍もの時間をかけて丁寧に鞣された革は、ほぼ100%土に還るという特徴があります。

さらに、栃木レザー社では
製造工程で生じる排水の処理(1日に900トンもの水を使用)にも薬品を使用することなく、バクテリアや微生物によって段階的に中和、浄化させる循環システムを採用しています。その後、原皮洗いの水に再利用されるなど、自然の川に戻しています。

伝統的な技術と
環境に配慮した知恵、長年に及ぶ試行錯誤のもと「自然との共存」という環境問題に取り組まれています。




















長々とブログにお付き合いいただきありがとうございます。

画像では伝えきれないこととして
見学の際に、働いている職人の皆様が明るく挨拶をしてくださったこと。年齢層も若く、いきいきとした姿がとても印象的です。わいわい楽しそうとは違う、やりがいを持って誇りを持って仕事をしている光景に心を打たれました。

栃木レザーならではの「なめし方」をメインとして紹介いたしましたが、もちろんどこのタンナーさんも日々稼働して日々努力されています。
あたりまえのようですが、栃木レザー=正しいという話でもありません。あくまで「どう使うか?」という用途の問題で、言い方を変えるとわれわれが所作をつくる上で「ピット槽なめし」でつくられる革素材が必要であった、ということです。

今ブログでは栃木レザー社の信頼性について、「ひと手間」という言葉をお借りしています。言葉の響きとしては簡単に聞こえるかもしれませんが、お読みいただいた方には、きっとその「ひと手間」の価値が伝わっているんじゃないかと思います。

ぼくたちが言いたいことは
「ピット槽なめしのフルベジタブルタンニンレザー」の魅力

植物性の天然成分でなめし、革が本来持つ風合いを生かした製法のため使うほどに革の油分がにじみ出てきます。つまり色艶が増し、経年変化を楽しむことができます。
そして、膨大な時間と脈々と受け継がれた「ひと手間」をかけることで、皮へ余計な負担を与えずにコシのある革に仕上げています。動物が生きている時に付いた傷やシワなどの痕がそのまま残っているのも特徴です。
さらに、染色をする際に革の内部(芯)までしっかりと染めているため、表面についた引っかき傷がさほど目立たずに(程度によりますが)革の内側から出てくる油分により、次第にアジとなり、魅力となります。

最初はわかりづらいけれど、
使って馴染む。経年変化により愛着が増す。
革ならではの魅力は、皆様の手元で長く使える要因となります。


栃木レザー社様、
見学、取材協力いただきありがとうございます。


ともに「ピット槽なめし」フルベジタブルタンニン」と、革の魅力を伝えていきましょう。
(リンクのホームページ内では、今ブログで書いていることがより詳しく掲載されています)






所作では
ほとんど(9割以上)のシリーズが「ピット槽」でなめされた革を用いています。

 


みなさまの手元で
いつもの、たくさんの
ご愛用に繋がりますように。




それでは、また。





nakabayashi


 
 



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